8月は品薄顕著、鋼材価格はさらに上昇
『鋼材の品薄感ひろがる』
本年度はじめからの鉄鋼各社によるロール引き受けカットにより、夏場以降の鋼材の品薄感が大幅に進みそうです。特に鋼板類の品薄感は顕著で、値段を度外視した品物の獲得競争が始まりつつあります。同様のことが鋼板をリロールする2次製品に波及し、建物の柱になるコラム製品の品不足が深刻化しています。
国内モノづくりも回復傾向を示してきていて、これからの値上げはナイモノ高の様相を呈しています。
『8月以降の鋼材価格も値上げ進行』
この状況を受けて一般鋼材のメーカー売出しも8月は東京製鉄がH鋼や建材製品を3~5%、厚鋼板5%値上げを発表し、日本製鉄もH型鋼の値上げを発表、3か月連続で、上げ幅は3か月で15%以上になる見込みです。
『自動車向け自給材の値上がり鮮明化、調達難に危機感』
好調を維持してきた自動車生産においても自給材での調達難が鮮明になり、値上がり基調がようやく顕著になりだしました。
『大手メーカーのひも付き材も価格大幅UP』
鋼材の価格上昇を受けて、遅まきながら大手ユーザーとのひも付き材の価格交渉の決着が見えてきた業界もあります。電機、建材向けの大幅値上げが決着。
造船向けの厚鋼板も大幅改定が世界的な価格上昇を背景に妥結した模様です。
本来であればこれらの妥結幅もきちんと新聞発表を頂き、下請け・孫請けを行う中小零細企業の価格是正への先鞭を切って頂きたいのですが、鉄鋼メーカーはじめ大手企業は自社の利益を優先して国内モノづくり産業を支えている中小企業向けの配慮はあまり感じられません。
『世界的なミル不足、日本の鋼材輸出増は進行』
鉄鋼製品の半製品・スラブなどは全世界的に品薄で各国の大手メーカーは脱炭素社会へ向けたCO2排出量カットに向けても獲得競争を激化させています。
その影響もあり、日本の鉄鋼メーカーの鉄鋼輸出量もデータとして大幅増加の傾向が顕著に現れようになりました。ますます国内需要に全く関係なく素材供給側の一方的な獲得競争での価格上昇も懸念される状況が続いています。
『スクラップ市況に連動し異形丸12年半ぶりの高値に』
スクラップも本年初より右肩あがりの上昇を続けており、それに連動する形で市況が反応して、異形棒鋼も12年半ぶりとなる大幅な高値をつけています。建設用のH型鋼も国内需要の復調もあいまって鋼板類とともに品薄になってきており、市況価格が上昇を継続しています。
『日本製鉄は鋼板すべて連続での大幅値上げ
薄鋼板は累計6万円(トン当たり)の値上げ』
世界的な需給ひっ迫と国内での品薄からのナイモノ高をうけて、日本製鉄は更なるトン当たり1万円の値上げを発表しました。値上げ幅は本年の累計で6万円となり、昨年比ではほぼ2倍に相当する価格になることが確定しました。過去にこのような例もなく、ただただ、市場は驚くばかりです。
『厚鋼板は累計5万円(トン当たり)の値上げ』
さらに、厚鋼板の値上げも発表、現状からトン当たり1万円、累計では今年に入ってから5万円の値上げとなりました。ウッドショックなどの対岸の火事のように評しておりましたが、これはすでにメタルショックとも呼べるまったく異次元の値上げになっております。鉄鋼製品を扱うすべての生産活動に相当の大きな影響を与えることは必至の状況が続いており、さらに今以上の苦しさが到来するものと思われます。
『国内市況は品薄と価格高騰の2重苦に』
国内の特に鋼板の市況はお盆休みを迎え一部落ち着くものの、お盆明けから9月にはこの品薄状態がさらに加速することが考えられ、現状にも増して、価格上昇圧力が強くなる傾向にあります。年度初めから常に値上げをし続ける状況で、価格も「時価」の様相が強くなってきています。見積もり有効は長くて1週間、在庫は成り行き、オファーはできない、そんな品薄状態が続いています。
『資材不足により建築施工ができない状況も』
スクラップ不足から端を発した原料高騰により、今年の下期から活況を呈するはずであった建築需要にも影響が懸念されます。調達価格が上昇を続ける中で大手ゼネコンの受注制限などの動きも心配されるほどです。秋以降の鋼材価格も値上げが続いていく予想が濃厚になってきた状況下では資材不足と価格高騰による施工ストップや先延ばしによって本年の建築復調の動きがなくなることもいよいよ現実味を帯びてきそうです。
『10月~12月の鉄鉱石価格も上昇。最高値更新も』
高炉の鉄鉱石調達価格もさらに今以上に上昇を続けています。今年に入ってからは過去最高値を更新し続けており、原料高はとどまるところを知らず、下期も、場合によっては来年も続いていく予想が濃厚になってきました。過去最高の高騰を今後も続けていく様相です。
『値上げはとどまるところなく今後も値上げ幅が大きくなる予想
すべての品種で昨年比の倍の値を超える可能性も』
今後の価格上昇は年内は確実で来年までも長引く可能性が大きくなってきました。鋼材価格は昨年比ほぼ全品種が間もなく2倍に近くなる値をつけてくることは必至です。何とか弊社としてはお客様の需要と信頼を裏切らないようにしていきたいと、必死で努力をして参ります。
品物を待っていただくことや、価格面でご希望に添えないことも多くなってくるとは思いますが、なにとぞ、何卒趣意ご理解の上、今後ともご高配頂けますよう、よろしくお願い致します。
2021.8.15
アダチ鋼材株式会社
info@adachi-k.co.jp